大阪の話題とかそんなん

建物の歴史的・文化的価値を再構築しようや

実は、なみはやノーツではあまり扱わなかったテーマがあります。それは近代建築という分野。


いやー、別に避けていた訳ではなくて、私の中で勉強不足な面があって、紹介していなかっただけでなんですがね。
大阪の近代建築は、年代的に言うと「大大阪時代」にシンクロします。大阪が潤っていた時に建てられたものなので、豪華であり、華がある建物が多いと言っても過言はないでしょう。
大阪の歴史って三度表舞台があると勝手に思っています。大阪歴史博物館でもそんな区分をしていますしね。まずは古代、旧石器時代から平安時代初期、難波宮移転までの時期が一度目。次に、蓮如石山本願寺築造から幕末大阪城無血開城までの近世が二度目。そして近代工業勃興から大阪万博あたりまでの大大阪時代が三度目となると勝手に思っております。
で、やはり歴史の生き証人が多数残る、「大大阪時代」のファンが多いのではないかと勝手に推測しているのですが、如何でしょうか?


さて、昨年の話になるんですが、残念な話題が建築の話でいろいろとありました。それが、淀川区にあった渡辺邸と、大阪中央郵便局取り壊しの話でしょうか。
渡辺邸は、400年前に立てられた大阪市内最古の木造建築であり、それだけではなく「渡辺綱(わたなべのつな)」の子孫が住んでいたという、大阪にとって貴重な歴史がたくさん詰まった由緒正しき民家でした。渡辺綱は、昨年1月に茨木・茨木童子の回でも紹介させていただきました(茨木童子と決闘した物語が伝えられている)し、その後の阿倍清明の回でもちょっと茨木童子に関連して出てきましたからね。
その渡辺邸が取り壊された理由が、「相続税が払えない」という、「ヾ(-д-;)ぉぃぉぃ何とかならなかったのかよ」という理由だったのですよ。ただただ残念です。
そもそも登録文化財として登録されていたのに、それを解除して取り壊されていたという衝撃の事実に、開いた口が塞がりませんでした。有形文化財というのは、指定されると永遠に(壊れない限り)保護されると思ってました。そして、適当な補修をされて、継続的に残るものだと思っていたんですが、そうではないらしい。
原因となった相続税というのも、本当にそれだけ?って思うくらいあっけないもの。まあ税金なんで、免除は出来ないにしろ、分割納税だとか、現物納付であるとか、そういう対応が出来なかったのかと思いますよね。(それが出来なかったからこそ解体だったのだと思いますが)


また、大阪中央郵便局局舎も取り壊されるというショッキングなことも。
大阪駅前の一等地にあり、大大阪の玄関口の都市計画を具現化し、凛とした無駄のないデザイン。とても印象的でしたね。これも、郵便局民営化で再開発の対象でなくなってしまった。
はっきり言いましょう。これは日本郵政の判断の誤りであり、後々後悔することになることは明白なのです。
古いものは「時間」というものを蓄積しているのです。取り壊してしまうことは、つまり「時間」というものを捨ててしまったという事。建物はまた作ればいいのですが、時間というものは取り返せるものではないのです。ほら、日本人って歴史と伝統って好きですやん。その伝統って言葉を使えないということになるということに気づかないんでしょうかね。
しかも、空室率が拡大する昨今、「ビルバブル」が崩壊する可能性だってある。この春新しく生まれた、グランドフロント大阪のオフィステナント入居率が3割に届かないことも象徴的であることのように思います。(これについては、別にまとめたいと思います。)


さて、私の思いをつらつらと書いてきましたが、じゃあ今後どーすりゃいいのか?
これは私からの提案なんですが、まずはどの近代建築を残すかどうかの精査ではないですかね?建築物を何でもかんでも保存しろとは言いません。耐震性など、出来ないことも多いでしょうし、再開発を否定するつもりもありません。そんな法律・条例制定が出来ることよりも保存リストの整備を私は望みます。こういう取り壊しを発表して、そこから反対運動をしていかなきゃいけないとか遅すぎると思うのですよ。

あと、民間所有の文化財を解除する場合の一定のルールを課すというのも方法ではないですかね。そもそも文化財として登録しておきながら、解除出来るわ取り壊せるわとか、文化財って一体なんなんだって感じですからね。


「歴史は壊してしまうと取り戻せない」このフレーズが未だに耳に残っていますよ